Cast : ブラッキー  Blight=Glorious
    エーフィ   Julia =Glorious
    ロケット団研究員 Carlos=Hypocrite

Chapter0:2 years ago...

ここはロケット団第七研究所。
主にポケモンの生態、進化、能力等の研究・実験を行っているという。

2年前、二匹のイーブイが連れて来られた。
二匹はGlorious(グロリアス)と言う姓を付けられ、♀をJulia(ジュリア)、♂をBlight(ブライト)と名付けられた。
その二匹はまず、「なつき進化」についての研究の為一人の研究員が育てることになった。
研究員の名はCarlos=Hypocrite(カルロス=ヒューポクライテ)
彼はとても大切に、二匹を分け隔てなく育てた。
だが、二匹は1年半の歳月を要しても未だ進化しなかった。
なので、仕方なくロケット団はなつき度を強制的に上げようと薬の投与を始める。
カルロスは大切にしてきた二匹を守ろうとするが、上からの命令は絶対であり、結局薬を投与してしまった。
すると、それからわずか半年の間でブライトはブラッキーに、ジュリアはエーフィに進化した。
だが、ロケット団の実験はこれで終わる訳では無かった。
カルロスには更に辛い命令が言い渡される事になる・・・。

Chapter1:日光・月光合成計画
ブライトとジュリアは、薬の投与を受けた為少し痩せてしまったが、二匹は元気にしている。
「なぁ、ジュリア?前に博士がくれた薬、本当に病気を治すためのだったのかなあ?」
しばらく部屋の中でじゃれ合っていた二匹は、その場に寝転んで話し出した。
二匹はカルロスの事を「博士」と呼んでいる。
「う〜ん…そうなんじゃない?博士がくれたんだし・・・」
「でもよ、俺たちはあの時全然元気だったじゃないか。何かおかしくないか?」
「自分では気づかない内に悪くなる病気がある、って博士言っていたじゃない。今こうして生きているのだし、大丈夫よ」
そう言われると、ブライトは少し考え込んでしまった。

丁度その頃、大会議室では研究所員全員を集めて会議を行っていた。
「いいかっ!この実験を成功させればどんな相手だろうと勝てるようになるっ!絶対に成功させるべきだっ!!」
大会議室に議長の声が響いた。議長の後ろにあるホワイトボードには「日光・月光合成計画」とある。
「ふっ…ふざけるなっ!そ…そんな事をしたらっ、彼らはッ!!」
議長の声に負けぬ様に、カルロスも怒鳴った。
「良いかカルロスっ!お前はただの研究員だ!ヒラのお前がこれ程までに重要なプロジェクトに参加出来る事を喜ぶべきなんだぞっ!?」
カルロスの反対している計画…それは、エーフィ、ブラッキーの持っている「太陽光吸収能力」と「月光吸収能力」の力を大きく増幅させ、エーフィは太陽の下で戦えばもの凄い強さに、ブラッキーは月の下で戦えばもの凄い力を発揮する、という物であった。
更に人間の言葉を理解し、話せるようにIQを上げ、声帯にも手術を施すという。
これによって、完璧なコンビネーションとポケモンの反抗も防ぐことが出来る、らしい。
もちろん…この計画は普通の訓練では無理がある。
そこで使うのはやはり「薬」であった。
これは半年から一年程の間薬を投与し続けなければならなく、その間ポケモンには激しい苦痛を伴う恐れがある、という。
そして、カルロスには「もう二度とポケモンの健康を害する様な薬を与えたくない」という思いがあった。
「カルロス…困った奴だ。まぁ、仕方が無くなればお前の変わりはいる。今日中に首を縦に振れないようでは…お前は二度と二匹に会えな
くなるぞ。分かったな。」
「ぐっ…そんなっ…!」
「会議は以上をもって終了とするっ!解散!」
ぞろぞろと所員が出て行く中、カルロスは会議室の机を涙で濡らしていた…。

Chapter2:決断
会議の後、カルロスはブライトとジュリアに会う事が出来なかった。
別の研究員が彼らに薬を投与させるのを見ているだけになるのはカルロスにとって一番苦痛な事であった。
だが、何にしても自分か他の誰かが投与せねばならない。彼はこの皮肉な運命を恨んでいた。
そして、彼は夜までの間ずっと悩み続けた。ここから逃げるという手も考えたが、その後生活して行けるだけの資金は無い。
それに、この組織から抜け出すという事はとても容易な事では無く、ましてはこんなに大切なプロジェクトを駄目にしようとすれば、死に物狂いで探して来るだろう。

そうして時は過ぎ、会議から2日がたった。
「あ、ブライト!博士が来たよっ!」
ジュリアが嬉しそうにブライトに言う。
「お、ホントだ。メシかな〜?」
顔のほころんだブライトとジュリアの元に近寄ると、カルロスは重い口を動かした。
「…残念だが検査の結果、進化前の病気がまだ残っているみたいなんだ。だから、もう一度薬を飲んでくれ…」
二匹は知能が特に高く、話せる訳ではないが人の言葉が理解できるそうだ。
会議の次の日、ブライトとジュリアは検査を受けていた。
その結果に二匹は少し落ち込んだ表情を見せた。
「…大丈夫だっ…心配っ…いらない……薬を飲めば必ず…治るんだから…!」
「……?」
二匹は薬で治る病気なのに何故ここまで博士が心配そうな表情をしているのか、と疑問に感じていた。
そして、カルロスは会議の夜「皮肉な運命」に首を縦に振ってしまっていたのだった―――

Chapter3:満月の夜-1-
『月光/日光合成力促進剤』と、あの薬は名付けられた。
その日もカルロスはその薬入りのポケモンフードを持って彼らの所へ行かなければならないのであった。
早いもので薬を投与して2週間が過ぎ、二匹は今のところこれと言った副作用も無かった。
「(私に――彼らの生き方を決定する権利があるのか?どうして…こんな事を…)」
毎日、呪文のように心の中で唱えている言葉を今日も唱えながら、二匹の待つ部屋へと足を運んだ。
今日も二匹に笑顔を作り、毛づくろいをしたり、餌を与えたりした。

そして、その日の夜。
ジュリアは寝てしまっている。だが、ブライトは中々寝付けずにいた。
「(――んー・・・月が…見たいな…。何でだろ?)」
不思議に思いつつ、ブライトは月の良く見える窓へ行った。
そこから見えたのは、雲ひとつ無い空に輝く星と、まぶしい位に輝く満月。
「(あぁ…なんか、良い気持ちだなぁ…。)」
言いようの無い快楽を感じると、段々とブライトの意識が薄れていった。
「(ふぁ〜…寝ちゃいそう…。)」
「キレイな満月ね…ブライト…。」
「うわっ!」
突然ジュリアに声をかけられ、驚きの余り声を上げる。
「あ、だ、大丈夫?突然声かけてゴメン〜」
「いや、大丈夫…ってか、寝てたんじゃないのかよ?あ、起こしちゃったか?」
「ん…いや、月が綺麗だから起きたんだと思うわ。」
ブライトは月の光を受けて輝いているエーフィの額の宝石に目を奪われつつも話した。
「貴方のその額の黄色い輪…何か満月みたいよね。綺麗…。」
「んっ…、そうか?まぁ、月の光がこの輪に吸収されてる様な気もする…けど。」
ブライトは自分が今目を奪われていた箇所と似た部分を話題にされて、少し慌てた。
暫く二匹は会話を続けていたが、やがてブライトは寝てしまった。
「(あっ…ブライト寝ちゃった…。私もそろそろ寝ようかしらね。)」
ジュリアも寝ようと思い、ブライトの横で目をつぶった。

Chapter4:満月の夜-2-
それから何時間か後…。
ブライトは突然、目が覚めてしまった。
「(…あれ、俺…。)」
隣で寝ているエーフィを見ると、さっき自分が先に眠ってしまったのだと思い出した。
「…ふわ〜ぁっ…」
ブライトはもう一眠りしないと朝にならないだろうと思い、伸びをした後眠ろうとした。
その瞬間。さっきジュリアに話しかけられる前の時と同じ快楽が、何倍にもなって彼を襲った。
「う…ッウぅっ…!!」
快楽はやがて興奮へと変わり、意識を支配していく。
「あ・・・あアァッッ!!!!」
満ち溢れる力。抑えきれない感情、興奮。そしてその興奮は最後に、怒りに変わってしまった。
そしてついに、ブライトの意識が無くなってしまった。そこから先の事は、ブライトの記憶に刻まれることは無かった。
「グルルルルッ…」
意識を失った今のブライトに理性は無く、抑える事の出来ない力の矛先は先程まで一緒に寝ていたジュリアのもとへ向けられる。
「グルアアアアァッ!!」
ついにブライトはジュリアに襲い掛かってしまった。
「キャァァッ!」
だが、ブライトが噛み付くより早く、ジュリアは目を覚ましてブライトを避けた。
月光を背にしたブライトを見、とても驚いた表情をしながら口を開いた。
「ブ、ブライト!何する…のっ?」
ブライトの顔に先程まであった優しげな表情が消えてしまっている事に気付くと、ジュリアは次の攻撃に備えた。
「ねぇッ!嘘でしょっ!?ブライト…何かに操られてるとか、そういう理由で私を襲ったのよね!?」
既に理性を失ったブライトの耳に何が聞こえようと、彼の行動を妨げる事は出来なかった。
信じられない速さでジュリアの目の前に現れると、ジュリアに体当たりで攻撃した。
「キャァァァッ!」
ジュリアは勢いよく壁に激突し、頭を強打してしまう。


「(うっ…動けない。誰かっ…ブライトを…止めて…っ!)」
ブライトは噛み付こうとジュリアに飛び掛ってきた。
「うウッッッ!!グッ…アァァアァッ!!!ヤ…やめッ!!!!」
ブライトの牙が深々とジュリアの足に突き刺さった。
同時に鮮血が吹き出すが、ブライトは攻撃の手を緩めない。
「ダ…ダメェッ…ブライ…ト…し…死んじゃう…よぉっ…」
体から血が抜けていくのに比例して、ジュリアの体に更なる痛みが走る。
「(誰か…誰か…博士…ッ……!はか…せ……)」
もうろうとする意識の中、カルロスの名を心の中で叫んだ。
だが、ジュリアの意識はついに途絶えてしまった。
その後ブライトは部屋中を荒らしまくり、部屋の外へ出ようとした。
そして、窓ガラスを体当たりで壊して外に出た瞬間。
朝日が姿を現した。
段々と月の光を打ち消していく。
すると、ブライトの目に段々と正気が戻っていった。
「ん…ここは…」
完全に正気に戻ると、ブライトは何故外にいるのか考えた。だが、答は出てこない。
次に血で赤黒く染まってしまった体を見て、絶句してしまう。
「(俺は…何をしていたんだ…!?)」
ふと振り返ると割れた窓ガラスが目に入った。
窓の奥に目をやると、ひどく荒らされた部屋も少し見えた。
「(……ジュリアッ!?)」
とてつもない不安に駆られながら、ブライトは割れたガラスも気にせずにジャンプし、部屋に飛び込んだ。

Chapter5:希望
四肢に思い切り力を入れて、ブライトは部屋に入った。
そして、ブライトの不安は的中しており、部屋の中が見えた瞬間彼の心に絶望が広がっていった。
「っ!…ジュ…ジュリアッッッ!!!」
少しずつ記憶の糸がほぐれていき、彼は自分が何をしたかという記憶が無くとも大体の推測がついた。
ぐったりとしたジュリアの体に抱き付くと、まだ暖かい感触があった。
「おぃ…おぃっ!!ジュリアっ!!目を…開けてくれよ!!!ほら…朝だぞ?お天道様が見えるぞっ…??」
トクン…
「!!」
ジュリアの暖かい体を寄せると、確かに心臓の鼓動が聞こえた。
更に、口からは暖かい息がもれている。
「(ジュリア―――生きてるんだなっ!!)」
部屋の中に入った時とは全く逆の感情が、彼の心に広がっていった。
そして、ジュリアを背中に乗せてブライトは再び部屋から飛び出した。
ジュリアを落としてしまわない様慎重に、かつ素早くカルロス博士のいる部屋まで走った。
「(5分ほど走れば博士の部屋に着く…ジュリア…!頑張ってくれ!)」
そう思っていると、何と1分で博士の部屋まで来てしまった。
ブライトは自分の足の速さに少し驚いたが、速度を落とさずに博士の部屋の窓ガラスに向かって体当たりをし、中へ入った。
”ガシャーンッッ!!”
「…!??」
ブライトは余りの音に飛び起きる。
「ブ…ブライト…?ジュ、ジュリアッ!!」
「早く…早くこいつの足を治してやってくれ!!」
ブライトは博士を促した。
だが、カルロスは焦りつつも、とても大きな驚きを隠せずにいた。
「(…ブライトが…人間の言葉を喋っている…!しかも…かなり上手に…!)」
カルロスは昨日行った声帯交換手術を思い出しつつも、今はジュリアの容態が先だ、と自分に言い聞かせながら急いでジュリアを応急処置室へと運んだ。
「(…これはヒドいな…何て深い傷だ…。)」
ジュリアの赤紫色の足を見るなり、少し不安がこみ上げて来た。
「ジュリア…ッ…!本当に…ゴメンよっ!!…死なないでくれっ!!」
「…大丈夫だ、ブライト。私が必ず彼女を助けてみせるっ!」
いつの間にか付いて来たブライトを慰めつつ、カルロスは必死でジュリアを介抱した。

Chapter6:最後の仕事
――そして、その日の昼。
「……ふぅ、やっと終わった…。」
応急処置室には疲れきった表情のカルロスと、眠りについてしまったブライトと、薄紫色の足に戻ったジュリアがいた。
そして、カルロスは決断した。
この二匹が幸せに生きていける最善の方法をとる事に。
カルロスは薬品棚から白色と黒色のカプセルを取り出した。
「(私の開発した、君たちに投与する最後の薬だ…。これからは二度と、こんな事は起こさせない…!)」
それをポケットにしまうと、カルロスは二匹をモンスターボールに入れた。
「(これからは、どんな時も一緒だ。最後に一仕事したら皆で一緒に暮らそう…。)」
カルロスの最後の一仕事。それは、金庫室への進入であった。
「(セキュリティが甘くなる時間と、金庫室へのキーカードを入手するのに二週間を要してしまった…。すまないな、ジュリア、ブライト。)」
カルロスは最後の一仕事を手早く済ませると、第七研究所を後にした。

Chapter7:夕暮れ刻
とりあえずホテルに行き泊まる部屋をとると、ジュリアをベランダに運び、日光に当ててやった。
日光合成の力を借りて、早く傷を治すらしい。
「なぁ…、博士…?俺の…俺のせいでこんな…ことにっ…。ゴメン…博士。」
震える声でそう言うと、頭を下げる。
「違う…違うんだブライト…!頭を下げないでくれ…。下げるのは…私の方だ…!!お前が昨夜変になってしまっていたのは他でもない、私の投与した薬の作用なんだ…。」
「いや…いいよ、博士…それ以上言わなくても…。俺には全て分かっていたんだ…。あの部屋にいれば廊下から所員の噂話が聞こえるんだ…。博士が投与していた薬の話も、その作用も、目的も…そして、博士が計画に大反対して議長の叱責を受けたことも…!!でも…俺は博士を責めたくなかったんだ…。博士だって好きでやっている訳じゃないのに…なのに責めるなんて事…俺には出来なかったんだ…。だから…これは俺の責任だよ…。」
「ブ…ブライトっ…お前は…そこまで私のことを考えて…!!――なのに私はッ…!」
「博士…!お願いだ、自分を責めないでくれ…!本当に悪い奴は…議長って奴なんだろう…!?俺は今日の夜までに、その議長って奴の所へ行って、復讐してやるんだ…。この身がどうなったって良い…!それに…ここにいたら今度は本当にジュリアを…」
「ダメ…駄目…よッ!ブライト…お願い、ここに居て…ほしいの。また…一緒に…お月様を…見たいのっ!!」
声のする方を向くと、夕日を背負ったジュリアの姿があった。
「戦いは…、戦いしか生まない…だからっ、復讐とか、報復とかっ、そういうのはダメなのよっ…!」
ジュリアも人間の言葉がまだ片言ながらも話せるようになっていた事にカルロスはとても驚いていた。
「(ジュリア…あれだけの怪我を負っていてもう立てるのか!?)」
ふと、日光合成の事が脳裏をよぎった。
「…ジュ…ジュリア…!大丈夫なのか…?……でも駄目だ…俺が居たら…また皆を傷つける――」
「…ハハっ、大丈夫さ…!私を誰だと思っている?これでも一応『博士』何て呼ばれているんだぞっ!」
「…えっ…??」
驚き、きょとんとしているブライトに微笑みかけ、ポケットに手を入れた。
「ジュリア、お前は…今、日光を受けると理性が保てない体のはず『だった』んだ。」
カルロスがポケットから黒いカプセルを取り出す。
「えっ…私…が?なん…で―」
「この黒いカプセル―――ジュリアのは白だったがな。これを飲めば、完全に治るんだ。だから、ブライトもこれを飲めば大丈夫。もう夜も怖くないっ!」
「えっ…本当に??」
ブライトは前にもそんな台詞を聞いたような、と思い出していた。
だが、前と違うところがあった。それは、博士が全く悲しい顔をしていないという事。
「本当さっ!だから…復讐なんて事はしちゃいけない。分かったな?ブライト…。これからは、皆で一緒に―――そうだな。旅でもしようじゃないかっ!」
そう明るく言うと、ブライトの口にゆっくりと黒いカプセルを入れる。
「これが最後の―――私からの特製薬だっ!!」
自分に言い聞かせるようにカルロスはそう言うと、ブライトは薬を飲み込んだ。
「…博士!!本当に…ありがとう!!!」
ブライトは博士に頭を下げ、涙をこぼす。
「なぁに、お前らが幸せならそれで良いさっ!」
「ブライト…今夜も月…見ようねっ!」
「……!!――ああっ!!今日も満月位大きい月が見えるだろうしなっ!」
そう言うと、ブライトはジュリアに抱きついた。
「うわぁっ!ブライトぉ〜、イキナリはびっくりするよ〜!」
「あ、すまねぇなっ!はははっ!!」
夕日の光を受けたブライトの涙が空を舞うと、ジュリアとカルロスの顔にかかる。
「男のクセに泣くなんて、情けないわよっ♪」
「…おぃぉぃ、そりゃ無えだろ〜…!」
「あははははっ!」
その部屋では、絶えることの無い笑いが夜を迎えるまで続いたという。

Final Chapter:To the Future filled with Hope.
二匹はベランダに出て、月を見ていた。
既に博士は眠りにつき、二匹の他には誰もいない。
「なぁ、ジュリア…。俺がお前を襲ったとき…怖かったよな…?」
眩しい程に輝く月を横目に、ブライトが言った。
「えっ…。ええ…。そりゃぁ…怖かったわ…。でも――――」
ジュリアは視線を月からブライトへと移し、続けた。
「貴方は…あの時、凄く怖い目をしていた…けど、私は安心出来たの。また明日になれば、いつもの笑顔が見れる。そう思ったの。そしてこれからも、貴方はいつもの笑顔で私を見てくれるでしょう?それだけで…私は幸せよ!」
「ジュリア…。俺は出来る限り…お前の事を幸せにしてやろう。これからはずっと一緒だ。だから――」
ブライトはジュリアから視線をそらす。
そして、自分の足を見つめる。
「お前の足が痛むのなら、俺もその痛みを共有しよう。」
そう口走ると、ブライトの前足から鋭い爪が姿を現した。
そして、そのまま爪はブライトの足に深々と刺さる。
「っぐ…」
ブライトの顔が歪んだ。
「!!止めてっ!そんな事しないでっ!!!」
「ぐぅ…ぁ。あ…ゴメンよジュリアっ…。お前には…笑顔を見せないと…な。」
ブライトの爪が足から抜ける。抜けた爪の軌道に赤いが走る。
苦痛そうな顔は笑顔に戻っていた。
「なぁ…?これで、良いよな?ジュリア。これからはずっと、俺と一緒に生きよう。この傷は――エンゲージリングの代わりだ。」
「ブライト…。…バカねぇっ…!そんな事しなくたって…貴方の気持ちには気付いていたのに……!」
そう言うとジュリアは、ブライトの近くへ行き、傷を舐めてやった。
「……これからは、ずっと一緒…ね。」
その光景を見ているのは、空に輝く月と星だけだった。

明日からどんな事が待ち受けているのだろうか?
もしかすると既に、ロケット団がもうすぐ傍まで来ているのだろうか?
だが、どんな運命が待ち受けていたとしても大丈夫さ。
俺とジュリアと博士がいれば、絶対に幸せを掴める。
そして、どんなに過酷な状況だとしても、それに屈せずに精一杯の努力をする。
そうすれば、目の前に広がるものがあるはずだ。
さあ、行こう
希望に満ちた未来へ――――


"The Story of Moonlight" was closed.
あとがき

ご拝読ありがとう御座います。
この話は初めて完結まで書き下ろせた作品で、今読み返すと色々反省点が浮かんでくる物です^^;
何よりも情景描写が甘々ですから、読み直してみると情景は殆ど脳内妄想で補完せねばならないという
大変読み手への配慮が足りない作品となってしまいました。
色々と細かい部分・細かくない部分にツッコミを入れて数えると、両手でも足ないやもしれませぬ(汗

今のところこの話の続編を書く予定は無いですー。
書こうと思えば書けそうなものだけれども…。

" ゚☆,。・:*:・゚★o(´▽`*)/♪Thank U 4 Reading♪\(*´▽`)o゚★,。・:*:・☆゚ "